日本/国内災害(公開日:2025.06.06)
能登半島地震・豪雨緊急復興支援「能登子どもサポート給付金」アンケート調査結果を石川県教育委員会へ提出
セーブ・ザ・チルドレンは、2024年11月から12月にかけて、能登半島地震および奥能登豪雨の緊急復興支援活動の一環として「能登子どもサポート給付金」を実施しました。
本給付金は、返済不要で、災害の影響により進級・進学や就職に向けた準備などに支障がないようサポートすることを目的としています。
対象は、発災時に石川県七尾市、穴水町、能登町、珠洲市、輪島市のいずれかに在住し、住宅が一部損壊以上の世帯の小学6年生から高校生世代の子どもで、最終的に2,876件(4,051人)に給付を行いました。
申請受付時には任意のオンラインアンケートも実施しました。アンケートでは、能登半島地震や奥能登豪雨が子育て世帯の生活や子どもにどのような影響を与えたかについて聞き、昨年12月にはアンケート調査結果の速報を公表しました。
4月24日、調査結果の最終版報告書を石川県教育委員会へ提出し、その後、石川県庁にて記者への説明会を実施しました。
アンケート調査結果報告書全文はこちらからご覧ください。
【1】9割近くの世帯が、子どもの生活にマイナスの影響があったと回答
能登半島地震、奥能登豪雨による子どもの生活に対するマイナスの影響をたずねたところ(グラフ5)、「おおいに影響があった」の回答が49.8%、「やや影響があった」が36.8%で、合わせて86.6%が、子どもの生活へのマイナスの影響について回答しました。
具体的な影響(グラフ6)としては、「子どものストレス(災害への怖さなども含)がたまっている」が68.4%と最も多く、運動不足など発育面が36.3%、学力の低下が34.5%と続きました。また、子どもの居場所の不足が24.8%、通学路などの危険性が23.7%でした。
【2】赤字の世帯が被災前は7.5%であったのに対し、回答時点では32.2%と約4倍に増加
被災前(グラフ8)は「赤字で、貯金をとりくずしている」が4.8%、「赤字で、借金して生活」が2.7%で合わせて7.5%の回答でしたが、回答時点ではそれぞれ25.9%、6.3%の計32.2%と、約4倍の増加がありました。一方、被災前は「黒字で、毎月貯蓄をしている」が10.2%、「黒字で余裕がある」が10.0%で合わせて20.2%でしたが、回答時点ではそれぞれ3.5%、4.4%の計8.0%と、約4割に減少していました。
【3】半数以上の世帯が、被災した子どもや子育て世帯に対する公的制度や支援が不足していると回答
被災した子どもや子育て世帯への公的制度や支援の状況についてたずねたところ(グラフ9)、「まったく足りていない」への回答が13.2%、「ほとんど足りていない」が39.4%で、合わせて52.6%が公的制度や支援が不足していると回答しました。具体的に必要な支援(グラフ10)としては、子どもの学びに関する支援金が65.9%、次いで生活再建に対する支援が60.2%、住居への支援が45.1%、教育環境の整備が39.1%、文化・スポーツ活動の環境整備が36.1%でした。
【4】地震、豪雨の影響で不安に思っていること、またそれについて国や自治体、社会への要望を自由記述でたずねたところ、1,086件の回答が寄せられた
子どもに関する事柄では、子どもたちの居場所や遊び場の減少、心理的影響、学びや生活環境、支援の偏りに関する内容が多く見受けられました。
子ども以外の事柄については、現在の生活への不安や公的制度の不足、復興計画や将来の不安に関する内容が目立ちました。
以下、自由記述より一部抜粋(※原文のまま。ただし、明らかな誤字・脱字の修正や、個人情報保護の観点などから、原文から一部を抜粋し文意が変わらない範囲で編集、属性を変更している場合がある。( )内は、発災時の居住地、子どもの年齢層は申請時点。)
・市内のグランドや空き地がほぼ仮設住宅になってしまったため、子ども達が外で運動したり遊べる場所が無くなってしまった。外でのびのび遊べる場所や学校のグラウンドの確保、整備を早急に進めて欲しい。体を動かすことは子ども達の成長にとって大切な役割を果たしていると思うのでその能力や学びを止めないようにしてほしい。(珠洲市、中学生世帯)
・いまだに道路、学校施設など、整備されていなくて困っています。子どもは自転車通学ですが、道がガタガタで毎日親が送迎しています。学校の敷地内アスファルトも割れたまま、運動場もひび割れたままで大変危険です。(七尾市、高校生世帯)
・ 一部損壊や準半壊の人への支援金が少なすぎる。家の損壊の程度に限らず、水道や家電製品等、修繕にかかる費用が多いのは、これらの判定家屋の人も変わらない。(輪島市、高校生世帯)
・町が今後なくなってしまうだろうという思いで生活しています。町作りのビジョンを早く示してほしいです。(穴水町、高校生世帯)
・子ども達、若者、子育て世代への政策を充実してほしいです。(能登町、中学生世帯)
【5】アンケート調査結果をふまえたセーブ・ザ・チルドレンの提言
1.継続的な子どものこころのケア
・子どもが災害によるストレス反応に適切に対処できるよう、学校教育の中にそのための時間を計画的に確保すること
・被災した子どもが示す特有の反応やその対応について、保護者や周囲の大人が理解を深める機会を設けること
・上記体制整備のための、教職員とメンタルヘルスの専門家が連携した協働体制の構築とそれを担う人材育成を行うこと
2.遊びや学びの環境の整備・確保
・子どもが災害によるストレス反応に適切に対処できるよう、学校教育の中にそのための時間を計画的に確保すること
・被災した子どもが示す特有の反応やその対応について、保護者や周囲の大人が理解を深める機会を設けること
・上記体制整備のための、教職員とメンタルヘルスの専門家が連携した協働体制の構築とそれを担う人材育成を行うこと
3.被災した子育て世帯への経済的支援
・一部損壊を含む子育て世帯に対して、現金給付など経済的支援の充実を早急に行うこと
・国および県は、上記経済的支援の予算を確保すべきであること
・被災者の声を踏まえ、国は既存の公的支援制度の要件緩和や給付金額の増額などについて、早急に検討を進めること
石川県教育委員会からは「教育委員会もこころのケアの重要性を認識している。学校全体を上げて早急に進めていく」とコメントがあり、教育現場においても中長期的な取り組みが必要とのコメントがありました。
翌日の4月25日、セーブ・ザ・チルドレンは対象地域である5市町を訪問、調査報告書の内容を共有しました。いずれの自治体も、調査結果に熱心に目を通していました。
今後は県や自治体だけでなく、国へも提言を働きかける予定です。
今回の調査では、多くの保護者が子どもたちの居場所や遊び場、また通学路など子どもたちの生活環境について不安を抱えていることが明らかとなりました。また、2024年7月にセーブ・ザ・チルドレンが行った子どもたちに対するアンケートでも、同様の結果が見受けられました。具体的には、大人や社会に対して伝えたいこととして「子どもが過ごす場所(遊び場、公園や居場所など)」が3割近くありました。これらのことから、子どもたちの居場所や生活環境は、被災地域の大人と子どもにとって大きな問題となっていることがうかがえます。また、経済的な困難さを抱えている世帯が少なくないことも浮き彫りとなり、早急かつ中長期的な対応が必要です。
震災から1年以上が経過した今、復興や教育、生活環境の改善に向けた取り組みが進められています。そうした中で、子どもたちの声や意見が尊重され、今回の調査結果も参考、反映されることを願っています。
<セーブ・ザ・チルドレンの能登半島地震・豪雨 緊急復興支援事業>
セーブ・ザ・チルドレンは、子どもたちやその家族などの声に基づいて、発災直後から石川県で被災した子どもたちやその家族、子ども関連施設への支援を続けています。
これまでの活動詳細はこちらをご覧ください。
(報告:国内事業部 吉田)
本給付金は、返済不要で、災害の影響により進級・進学や就職に向けた準備などに支障がないようサポートすることを目的としています。
対象は、発災時に石川県七尾市、穴水町、能登町、珠洲市、輪島市のいずれかに在住し、住宅が一部損壊以上の世帯の小学6年生から高校生世代の子どもで、最終的に2,876件(4,051人)に給付を行いました。
申請受付時には任意のオンラインアンケートも実施しました。アンケートでは、能登半島地震や奥能登豪雨が子育て世帯の生活や子どもにどのような影響を与えたかについて聞き、昨年12月にはアンケート調査結果の速報を公表しました。
4月24日、調査結果の最終版報告書を石川県教育委員会へ提出し、その後、石川県庁にて記者への説明会を実施しました。
アンケート調査結果報告書全文はこちらからご覧ください。
【1】9割近くの世帯が、子どもの生活にマイナスの影響があったと回答
能登半島地震、奥能登豪雨による子どもの生活に対するマイナスの影響をたずねたところ(グラフ5)、「おおいに影響があった」の回答が49.8%、「やや影響があった」が36.8%で、合わせて86.6%が、子どもの生活へのマイナスの影響について回答しました。
具体的な影響(グラフ6)としては、「子どものストレス(災害への怖さなども含)がたまっている」が68.4%と最も多く、運動不足など発育面が36.3%、学力の低下が34.5%と続きました。また、子どもの居場所の不足が24.8%、通学路などの危険性が23.7%でした。
【2】赤字の世帯が被災前は7.5%であったのに対し、回答時点では32.2%と約4倍に増加
被災前(グラフ8)は「赤字で、貯金をとりくずしている」が4.8%、「赤字で、借金して生活」が2.7%で合わせて7.5%の回答でしたが、回答時点ではそれぞれ25.9%、6.3%の計32.2%と、約4倍の増加がありました。一方、被災前は「黒字で、毎月貯蓄をしている」が10.2%、「黒字で余裕がある」が10.0%で合わせて20.2%でしたが、回答時点ではそれぞれ3.5%、4.4%の計8.0%と、約4割に減少していました。
【3】半数以上の世帯が、被災した子どもや子育て世帯に対する公的制度や支援が不足していると回答
被災した子どもや子育て世帯への公的制度や支援の状況についてたずねたところ(グラフ9)、「まったく足りていない」への回答が13.2%、「ほとんど足りていない」が39.4%で、合わせて52.6%が公的制度や支援が不足していると回答しました。具体的に必要な支援(グラフ10)としては、子どもの学びに関する支援金が65.9%、次いで生活再建に対する支援が60.2%、住居への支援が45.1%、教育環境の整備が39.1%、文化・スポーツ活動の環境整備が36.1%でした。
【4】地震、豪雨の影響で不安に思っていること、またそれについて国や自治体、社会への要望を自由記述でたずねたところ、1,086件の回答が寄せられた
子どもに関する事柄では、子どもたちの居場所や遊び場の減少、心理的影響、学びや生活環境、支援の偏りに関する内容が多く見受けられました。
子ども以外の事柄については、現在の生活への不安や公的制度の不足、復興計画や将来の不安に関する内容が目立ちました。
以下、自由記述より一部抜粋(※原文のまま。ただし、明らかな誤字・脱字の修正や、個人情報保護の観点などから、原文から一部を抜粋し文意が変わらない範囲で編集、属性を変更している場合がある。( )内は、発災時の居住地、子どもの年齢層は申請時点。)
・市内のグランドや空き地がほぼ仮設住宅になってしまったため、子ども達が外で運動したり遊べる場所が無くなってしまった。外でのびのび遊べる場所や学校のグラウンドの確保、整備を早急に進めて欲しい。体を動かすことは子ども達の成長にとって大切な役割を果たしていると思うのでその能力や学びを止めないようにしてほしい。(珠洲市、中学生世帯)
・いまだに道路、学校施設など、整備されていなくて困っています。子どもは自転車通学ですが、道がガタガタで毎日親が送迎しています。学校の敷地内アスファルトも割れたまま、運動場もひび割れたままで大変危険です。(七尾市、高校生世帯)
・ 一部損壊や準半壊の人への支援金が少なすぎる。家の損壊の程度に限らず、水道や家電製品等、修繕にかかる費用が多いのは、これらの判定家屋の人も変わらない。(輪島市、高校生世帯)
・町が今後なくなってしまうだろうという思いで生活しています。町作りのビジョンを早く示してほしいです。(穴水町、高校生世帯)
・子ども達、若者、子育て世代への政策を充実してほしいです。(能登町、中学生世帯)
【5】アンケート調査結果をふまえたセーブ・ザ・チルドレンの提言
アンケート調査の結果をふまえ、セーブ・ザ・チルドレンから石川県教育委員会へ、次の3点を提言として伝えました。
1.継続的な子どものこころのケア
・子どもが災害によるストレス反応に適切に対処できるよう、学校教育の中にそのための時間を計画的に確保すること
・被災した子どもが示す特有の反応やその対応について、保護者や周囲の大人が理解を深める機会を設けること
・上記体制整備のための、教職員とメンタルヘルスの専門家が連携した協働体制の構築とそれを担う人材育成を行うこと
2.遊びや学びの環境の整備・確保
・子どもが災害によるストレス反応に適切に対処できるよう、学校教育の中にそのための時間を計画的に確保すること
・被災した子どもが示す特有の反応やその対応について、保護者や周囲の大人が理解を深める機会を設けること
・上記体制整備のための、教職員とメンタルヘルスの専門家が連携した協働体制の構築とそれを担う人材育成を行うこと
3.被災した子育て世帯への経済的支援
・一部損壊を含む子育て世帯に対して、現金給付など経済的支援の充実を早急に行うこと
・国および県は、上記経済的支援の予算を確保すべきであること
・被災者の声を踏まえ、国は既存の公的支援制度の要件緩和や給付金額の増額などについて、早急に検討を進めること
石川県教育委員会からは「教育委員会もこころのケアの重要性を認識している。学校全体を上げて早急に進めていく」とコメントがあり、教育現場においても中長期的な取り組みが必要とのコメントがありました。
翌日の4月25日、セーブ・ザ・チルドレンは対象地域である5市町を訪問、調査報告書の内容を共有しました。いずれの自治体も、調査結果に熱心に目を通していました。
今後は県や自治体だけでなく、国へも提言を働きかける予定です。
今回の調査では、多くの保護者が子どもたちの居場所や遊び場、また通学路など子どもたちの生活環境について不安を抱えていることが明らかとなりました。また、2024年7月にセーブ・ザ・チルドレンが行った子どもたちに対するアンケートでも、同様の結果が見受けられました。具体的には、大人や社会に対して伝えたいこととして「子どもが過ごす場所(遊び場、公園や居場所など)」が3割近くありました。これらのことから、子どもたちの居場所や生活環境は、被災地域の大人と子どもにとって大きな問題となっていることがうかがえます。また、経済的な困難さを抱えている世帯が少なくないことも浮き彫りとなり、早急かつ中長期的な対応が必要です。
震災から1年以上が経過した今、復興や教育、生活環境の改善に向けた取り組みが進められています。そうした中で、子どもたちの声や意見が尊重され、今回の調査結果も参考、反映されることを願っています。
<セーブ・ザ・チルドレンの能登半島地震・豪雨 緊急復興支援事業>
セーブ・ザ・チルドレンは、子どもたちやその家族などの声に基づいて、発災直後から石川県で被災した子どもたちやその家族、子ども関連施設への支援を続けています。
これまでの活動詳細はこちらをご覧ください。
(報告:国内事業部 吉田)