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アドボカシー
(公開日:2025.05.28)

【活動報告】国会議員ケニア視察−途上国の母子の命と健康を守る取り組みと日本の役割

 

セーブ・ザ・チルドレンは、429日から51日にかけて、国会議員によるアフリカ・ケニア視察を実施しました。

 

視察の目的は、昨年2024年のエチオピア視察に引き続き、開発途上国における持続可能で強靭な保健システムの構築に取り組んできた「Gaviワクチンアライアンス」、および「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)」が、ケニアの保健課題の解決のために果たしてきた役割について国会議員による理解を深め、日本政府による両機関への拠出の維持・拡充を含む保健分野ODAの拡大につなげるとともに、グローバルヘルス・パートナー間の連携をさらに促進することです。

 

視察には、深澤陽一衆議院議員、国光文乃衆議院議員、島田智明衆議院議員が参加しました。ケニア政府関係者との面会や、Gaviやセーブ・ザ・チルドレンの支援による予防接種事業、グローバルファンドによる感染症の予防、診断、治療に対する支援内容の視察などを通して、ケニアの母子の命と健康を守るための包括的な取り組みとそのシナジーを視察しました。


キアンダ・ヘルスセンターの関係者と撮影。


まずはケニア保健省を訪問し、ケニア国内の保健課題や感染症への取り組みについて話を聞きました。ケニアの現政権は、保健分野の4つの柱として、保健財政、デジタル保健エコシステム整備、医薬品・消耗品の安定供給、そして保健人材拡充に力を入れています。また、新たな国民保険の開始、デジタルヘルス機関の創設、プライマリー・ヘルス基金と慢性疾患基金の立ち上げ、プライマリー・ヘルス・ネットワークの整備や、10万人のコミュニティ保健ボランティアによるコミュニティ保健の強化など、多くのイニシアティブを開始しました。


ケニアでは、Gavi、グローバルファンド双方の支援のおかげで子どもの死亡率は下がってきているものの、新生児死亡率低下の進捗は芳しくなく、現在保健省が注力し、指標改善を目指しているとのことでした。また、日本政府がグローバルファンドやGaviへの資金拠出などを通して、継続的な支援を提供してきたことに対する感謝の意が表明されました。


保健省を表敬訪問し、ケニアの保健課題や、母子の命と健康を守るためのGaviやグローバルファンドの役割について説明を受ける。


次に訪れたムバガティ・ヘルスセンターでは、セーブ・ザ・チルドレンの支援による予防接種事業を視察しました。セーブ・ザ・チルドレンは、ニーズとギャップを特定し、ヘルスセンターのキャパシティやリソースで対応することが難しい課題への支援を提供しており、コミュニティ・ヘルス・プロモーター(CHP)の能力強化やトレーニング、家庭訪問による予防接種や啓発活動などを行ってきました。


予防接種のためにヘルスセンターに子どもを連れてきた母親と交流する様子。(ムバガティヘルスセンター)


ここでは、Gaviやセーブ・ザ・チルドレンによって導入されたワクチン冷蔵保管庫が役立てられていました。施設内のスペースが限られていることから、ワクチン保管用のコールドルームがいまだに完備できておらず、設備拡大のために日本の支援に期待したいという声も聞かれました。また、母親に連れてこられた新生児が予防接種を受けている様子も視察することができました。


Gaviやセーブ・ザ・チルドレンの支援で設置されたワクチン保管用の冷蔵庫。施設のスペースが足りず一ヶ所のコールドルームにまとめられないのが課題。(ムバガティ・ヘルスセンター)


予防接種を受けるべき子どもの数と接種の達成率を記録するポスター。アナログで記録されており、デジタル化が目指される。(ムバガティ・ヘルスセンター)


リルタ・ヘルスセンターでは、主にグローバルファンドの支援によるコミュニティの結核プログラムを視察しました。コミュニティ・ヘルス・プロモーターたちは、コミュニティ内の家庭を訪問し、すべての結核患者とその家族を取り残さず、完治のための適切な治療に繋げるための活動を行っていました。また、特に治療が難しく、経済的な負担も大きいとされる薬剤耐性結核患者向けの経済的支援なども行われていました。ここでは富士フィルムのレントゲン機器も活用されており、ポータブルかつAI診断機能付きで、結核の早期診断に役立てられていました。


グローバルファンドの結核支援事業で、コミュニティ・ヘルス・プロモーターがアプリを活用しながら結核接触歴追跡(コンタクト・トレーシング)について説明する様子。(リルタ・ヘルスセンター)


最終日は、ケニア国内で最大、またアフリカで2番目に大きな非正規居住区であるキベラ地区内の2つの保健医療施設を視察しました。


セーブ・ザ・チルドレンが支援してきたキアンダ・ヘルスセンターは、入院も可能な総合病院となっており、外来治療、予防接種、成長モニタリングと栄養サポート、急性栄養不良の治療、産前産後ケア、母子保健、家族計画、子宮がん・乳がん検査などさまざまな健康課題に対応していました。Gaviやセーブ・ザ・チルドレンのほか、ユニセフ、国連人口基金、赤十字や各国政府などのさまざまな組織や政府の支援により運営されている状況が説明されました。コミュニティのニーズに応え、24時間体制で保健医療サービスを提供できるようにするためには、日本を含むドナーからの支援が必要とされていることも明らかになりました。


予防接種の啓発ポスターの前で。ケニア政府とさまざまな組織の支援によって予防接種事業が進められている。(キアンダ・ヘルスセンター)


新生児にポリオの経口ワクチンを接種する様子。(キアンダ・ヘルスセンター)


最後に訪れたキベラ・ヘルスセンターではHIVプログラムの包括的な支援について説明を受けた後、メンター・マザーの取り組みについて学びました。これはグローバルファンド、国家エイズ・性感染症(STI)対策プログラム(NASCOP) 、ケニア赤十字社の支援を受けて、保健省が2012年に開始したHIVの母子感染予防のためのイニシアティブで、HIVに感染しながらも母子感染を予防できた母親(メンター・マザー)が、他の妊産婦に保健知識や心理的サポートを提供するピア教育やカウンセリング、家庭訪問とフォローアップ、家計支援などを実施していました。実際に活動に参加している母親たちから、直接自らの経験について話を聞くことができたのが印象的でした。


グローバルファンドのHIV支援事業で、HIVに感染しながらも母子感染を予防できたメンター・マザーが自らの経験を踏まえて、他の妊産婦に保健知識や心理的サポートを提供。(キベラ・ヘルスセンター)


非常に短い滞在ではありましたが、視察全体を通して、Gaviとグローバルファンド、またセーブ・ザ・チルドレンの支援がケニアにおいて保健システム強化に貢献し、特に脆弱性の高いコミュニティの人たちへ保健医療サービスを届ける上で重要な役割を果たしていることを確認することができました。一方で、人材や保健医療施設のリソース不足などの課題も見られ、こうした活動を維持継続していくための資金の投入や、さらに持続可能な取り組みにつなげていくことの必要性なども再認識されました。

 

主要なドナー国の援助政策の転換などによる、保健資金の不足が喫緊の課題となっている中、Gavi6月、グローバルファンドは2025年後半に、それぞれ次期戦略を実施するための増資を控えています。次期戦略が遂行され、より多くの母子の命と健康が守られるためにも、日本政府はGaviやグローバルファンドへの継続的な拠出を通して、グローバルパートナー間の連携を促進し、グローバルヘルス分野の支援を強化していくことが求められています。セーブ・ザ・チルドレンはこれからも、Gaviやグローバルファンドなどのグローバルヘルス・イニシアティブの役割や成果について広く伝えていくとともに、日本が今後も主要ドナーとしてさらに支援を拡充していけるよう、働きかけを続けていきます。


セーブ・ザ・チルドレン・ケニア事務所のスタッフと撮影。


 

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